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3話「歯」Moonlight.
「ごめんなさいねえ。ユーリったら、せっかくの新製品を」
「お気になさらないで、テーラーさん。私も見かけがおしゃぶりなのは改善せねばと思っていたんですの」
「でも、せっかくのいただき物を」
「まあ、テーラーさん! 私があなたにどれだけ借りがあるかお忘れ? あなたが説得してくださったとたん、あの男は親権をあきらめたし、養育費も滞りなく支払うようになったのよ」
「そんなこと借りなんて言わないで。私、そういうことは得意なの。それにね、あなたのお父様に、さんざんお世話になったのよ。なんせあの頃は、女の1人暮らしにとんでもなく冷たい時代だったの」
「またそんなことを。パパはゴミ収集の手続きなんかをちょっぴりお手伝いしただけですわ。それに比べて、私とあのDV夫はにっちもさっちもいかなかったのでしてよ」
ドリー・ベネット。は、ふとつぶやく。「それにしても、あの養育費は何をして稼いでいるのかしら。いえね、無くても生活できることはできるけれど。ペーターの将来を思うとあった方がだんぜんいいでしょう? でも、あの男にできる仕事ってどういうものか、少し気になってしまいますの」
ローザ・テーラーは微笑する。
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