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「母さん、その……。私を1人で大学までやってくれたのは母さんじゃないか。だから」
「お黙りなさい。あなたを育てられたのは、奥様のおかげ! 夫も職も身寄りも財産も失った私たちを拾ってくださった唯一のお方なのですよ。私もあなたもご恩返しをする義務があります!」
ぷるぷる震えるはメイドちゃん。ヘッドドレスもへにゃりと垂れ、トレイを握りしめています。
彼は渦中の当人なれど、未だ新米下っ端メイド。クラシカルなメイド服に見合った働きは果たせません。
お屋敷にお2人がおいでになったときは和やかだったのですが……。
たまってしまった大量のお酒の瓶が発見されたあたりから暗雲が立ち込め、何枚もの煙草の領収書、未開封のままゴミ箱行きにしてしまった健康診断の案内と、みるみる暗雲濃くなりゆきて。
奥様が「そろそろユーリを学校に行かせようと思うの。今のうちに手続きしてしまえば、今年の1年生入学に間に合うでしょう?」と、おっしゃった瞬間。
最初の雷がとどろきました。
いつも毅然とした奥様が見る影もありません。
別に怒られていないメイドちゃんも半泣きです。
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