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「奥様、そもそもこの子は読み書きができるのですか?」
「その……アルファベットもできないわ……。だからこそ」
「奥様はおいくつになられますか?」
言い切らせてくれません。
「は、80だけれどね……。でも私は」
メイドちゃん、そーっとフランソワーズさんを見ます。
きっと見返されます。びくびく目を伏せます。
心の中でがんばってー、と言います。
口に出す勇気はありません。
「奥様、その通りでございます。奥様は80歳です。80歳にもおなりなのです。それに比べてこの子はいくつですか?」
「9歳よ。だから、だからねフランソワーズ。私が死んだ後、この子が1人立ちするためには教育が必要なの。学校に行かせなくてはいけないのよ」
メイドちゃんの目に涙が浮かびます。ぷるぷるとフランソワーズさんを見上げます。
老いてなお忠実なハウスキーパー。厳しい瞳で見返します。
「ユーリ、使用人たるもの報告はきちんとなさい」
そうです。メイドちゃんは奥様のメイド。
幼くとも忠実なメイドです。
勇気を振り絞りました。
「学校はいじめられるからいやです!」
メイドちゃんも小さな男の子。
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