14人が本棚に入れています
本棚に追加
4話「教育」Moonlight.
「確かに襟元にハーケンクロイツがあったわ。ネオナチ気取りの若者ね。きちんと組織として機能しているわけじゃない連中。つまり、私の情報を流した上がいることは確定事項よ。襲撃場所の癖としては――、ファイルをもう一度見せて。そう、この団体の癖があったわね」
「ありがとうございます、テーラーさん」
ブラウンに向かって、ローザは軽く愚痴をこぼす。
「ユーリは仕事をしている私が好きらしいけれど……。たまにモナコやセーシェルあたりでぐうたらして余生を送りたくなるのよね」
ブラウンは同じようなうんざりした表情をする。
「私もそういった余生を検討していましたが……。あなたのおちびさんの家庭教師をすることになりましたね……」
年寄りになったからといって、思い通りには生きられないのだ。
再度ため息。
「そもそも私は教師ではなく教官なんですけどね……」
「そもそも私はあなたの教え子に守られるべき市民のはずよね……」
繰り返すため息。
「教え子の誰一人、尻尾をつかめなかった武装集団が……80歳の女性に蹴散らされたとあっては……。失礼ながら、私の教育方針が間違っていたのかと不安になります」
最初のコメントを投稿しよう!