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「つくづく、教育とは厳しいものね」
「……ええ。改めまして、スコットランドヤードよりご協力を感謝します。ローザ・テーラーさん」
「どういたしまして。ブラウン教官。あら失礼、ブラウン先生」
フランソワーズには内緒にしてね、とグラスを取り出す。
「そして改めてお礼を言わせて。ユーリの身元を探してくれてありがとう」
「私が探したのではありませんよテーラーさん。お礼は探してくれた者たちに伝えておきます。赤ん坊のころに難民として入国記録アリ。国籍カザフスタン。しかし、記録の際父親を名乗っていた男は、実父ではないでしょう」
「赤ん坊連れなら、申請はゆるくなる。人道的だわ。あの子の容姿は東洋系が強いけれど、あちこちの血が混ざり合った混血児でしょうね」
「恵まれている方です。しかしそれでもやるせない」
ローザはしばし瞑目する。
「ユーリの歳を「書類」という形で見たとき、自分が80歳であることを強く感じたの。時間がないと思ってしまったのよ、あの子に人並みの幸せを与えるのに。だから、学校について焦りすぎてしまったの。恥ずかしい話だわ」
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