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「奥さんはもう痩せすぎだよなあ。トシなんだからもっと栄養つけなくちゃ。えーと、今日は取り寄せの品だけでいいのかい?」
「はい! えっと、コロンビアからきた小麦粉です」
「はいよ。しかし、最近はこんな売り方もあるんだなあ。メールを見たときゃあうさんくさい気もしたけどね。わざわざ遠くからこいつを買いにくる客が多いんだ。もうチャリティはネットで知る時代か」
おしゃべりしながら、茶色の袋を出してきて。
「気をつけてな」
う、確かにずっしり重いです。
「ユーリもとうとうパン焼きに挑戦か。奥さんをたんと太らせてやりな」
「僕の挑戦はまた明日です。これは奥様が使うのです」
パン屋さんは、足下にきつねの口が開いたような顔をして。
ぱくりと食べられる覚悟を決めた顔になり。
「坊や。帰りな。今日は愛する家族と過ごすんだ」
と、厳かに十字を切りました。
使命はもう果たしたんだけどなあ。
まあ、騎士への礼儀とはこういうものかもしれません。
とにもかくにも帰らないと。「円卓騎士物語」が始まっちゃう。
えっちらおっちらメイドちゃん。使命を果たして小麦粉抱え。今日も明日も優秀です。
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