剣の舞

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 例祭は、簡略化された為、正午を過ぎての開始だった。  空には重い雲が広がり、今にも雨が降りそうだった。    記事に取り上げられたせいか、村人達は昨年に比べると大半が不参加だった。  崇龍会は、神社を支援する立場なので、各自の意向はともかく、ほぼ全員が参列していた。  参列者のうち村人は、付き合いで仕方なくといった者がほとんどだった。伝承に残る村の殲滅という言葉が、頭の奥底にあり、ただ無事に何事もなく例祭が終わることを望んでいた。  成り行きを見届けたいのか、カメラを持った人など、例の雑誌の関係者らしき人物が複数いた。  記事に興味をそそられたのか、ひやかしか、村以外から訪れた初顔もちらほら見えた。  結局、例年とほぼ変わらない参列者が集まり、皆、用意された座椅子やパイプ椅子に座り、始まりを待っていた。    例祭は、叔母の神前での一拝から始まった。  参列者も合わせて拝した。  式は粛々と進み始めた。  私語をする者は誰もいなかった。    雨が、ぽつりぽつりと降り始めた。  落ちた雨が境内の砂利を湿らせ、雨独特の匂いを放ち始めた。  生温い風が、境内を幾度となく過ぎ、雨音と叔母の祝詞の声だけが響いていた。  定刻通りに、例祭は終盤を迎えた。  叔母は、ご神体である龍の剣に深くお辞儀をした。  参列者は、帰り支度を始めようとしていた。    ふと、龍笛の旋律が流れ始めた。  龍笛の主は見当たらなかったが、その音色は静寂の境内に清々しく響き渡った。  参拝客は心地よい音色に惹きこまれながらも、例祭の工程には無かったので不思議に思った。 「笛だけ、やるのかな」 「そう…ね、舞は中止って聞いてるものね」  参列者達は、思いを口にし始めた。  
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