剣の舞

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 巴也は、祭壇の前に行き、龍の剣を両手で持ち上げた。    そして、柄を掴み、その冴え冴えした刃を顕にした。  刃は、前にも増して、凛とした光を放つ。  以前に、剣から掌に伝わっていた生温かさはなく、動悸も起きない。  あれは、葵生が最期に感じた自らの血の温もりー、村人達の屍の山を見た恐怖ー。    巴也は、剣身に備わる力を御するために、鋭い刃と対峙した。 ーこれは、自分の武器ー。龍神の力を宿すこの剣を、僕が制するー。    参列者達の中から、声が漏れた。 「ほお…あれが、龍の剣ー」 「なんと見事な…」  巴也は、直ぐには舞おうとしなかった。  その代わりに、向きを変え、剣を携えて琉煌の方へと歩み寄った。  そして、琉煌の正面で正座し、剣を横に置き、装束を整え姿勢を正した。  琉煌をまっすぐに見据え、額を床につけて深くお辞儀した。 「琉煌…、いや、白龍神ー。君は、僕がこの世に生を受けるまで、何百年という時を経て待ち続けてくれたー。葵生の最後の心残りを叶える為にー、僕を導く為にー、この世に人として生まれてきてくれた。本当にありがとう。貴方に会えて、本当に良かったー」    参列者から、嘲笑するような笑い声が起きた。 「あの人、大丈夫?何で祭壇に向かってじゃなくて笛を吹く人なの?」 「さあ…もう、やばいんじゃない?」    琉煌は、巴也を慈しむように微笑んだ。 「ーだから、言ったじゃないか。理解されるとは限らないと」  巴也は剣を掴んだ。 「いいんだ。どうしても君に伝えたかった」  巴也は、すっと立ち上がり、神楽殿の中央へ歩み、剣を構えた。
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