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豆電球のオレンジの光の下、重なって揺れる二人の影。
いい子だ――と囁く低い声。
大輔は混乱していた。
オレンジの夕日の下、大人の男に組み敷かれた――まだ小学生だった兄。
いい子だ――と囁いたのは、兄を虐待した汚い大人。
それはもう何年も前の、過去の光景のはずなのに――。
大輔は、震えながらベッドに潜り込んだ。晃司の眠るその場所に――。
「……大輔?」
縋るようにしがみつかれ、晃司は目を覚ましてしまった。よく眠っていた晃司に悪いと思うが、その衝動を抑えられない。
大輔はきつくきつく、晃司に抱きついた。そうしなければ、意識を保てないと感じた。
晃司に縋っていなければ、あっという間に過去に引きずられ、暗闇に落とされる。
「大輔、どうしたんだよ」
「……香さんと、井上さんが……」
そうだ、あれは穂積と井上だった。兄とあの汚い大人ではない。
頭ではわかっているのに、大輔の震えは止まらなかった。
晃司は、すぐに察してくれた。大輔の身になにが起きたのか。あいつら――と腹立たしげに吐き捨て、それから大輔を優しく抱きしめた。
「大輔、俺はここにいる。お前を抱いてるのは俺だ。お前が眠れるまで、ずっとこうしてるから……できるなら、寝ちまえ」
大輔は晃司の厚い胸に顔を埋めた。晃司の体温と心臓の音が、大輔を――今に繋ぎとめた。
それでも眠りに落ちる瞬間、過去に引き戻されそうになり、それが怖くて眠るのが恐ろしかった。苦しいから眠ってしまいたいのに、眠ったら悪夢にうなされそうで、怖い。
大輔は過去と今の間で翻弄され続け、やっと眠れたのは日が昇り始めた夜明けだった。
晃司の体温と、優しい心臓の音が――大輔を悪夢から守ってくれた。
◇◇◇◇◇
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