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鳴ったのは井上の電話だった。井上は深刻な顔で少し話した後、電話を切りながら大輔を呼んだ。
「大輔、O中央署まで車を出してくれ」
「え? でも、張り込みは……」
「それは終わりだ。事件現場近くのタクシー運転手から、事件当夜、浅井をタクシーに乗せたって証言が挙がった」
「夜、ですか? でも彼女、朝になってから帰ったって……」
「ああ、彼女は嘘を吐いてた。大輔、悪いが……ホシは彼女だ」
大輔はもう、井上に反論する言葉は持ち合わせていなかった。顔を強張らせ、車のエンジンをかけた。
深夜の住宅街、ワンボックスカーが急発進した。
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