D-2

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昼休みが終わって三十分ほど過ぎた。大輔はこの時間が一番苦手だ。外に出ている時はいいが、昼食後に事務仕事をしていると容赦なく眠気が襲ってくる。今日はラーメンに餃子だけでなく、チャーハンまでつけてしまったのがよくなかった。満腹のせいでさらに眠い。 ノートパソコンを叩く大輔の手は、何度も止まった。そのたび瞼が落ちる。視線を感じた。周りの同僚が笑いを堪えながら、大輔を見ていた。 さすがに気まずくなって姿勢を正す。目を覚ますためにトイレでも行こうかと思ったが、ノートパソコンの横に置いた携帯電話が震えたのでそちらに目をやる。 大輔の目が少し覚めた。電話は珍しい相手だった。一瞬出るのに躊躇ったが、こんな時間にかけてくるということは仕事の話に違いない。大輔は個人的な感情を抑えて電話に出た。 「もしもし、井上さん?」 珍しい着信相手は、捜査一課の井上だった。大輔は彼に多種多様な感情を抱いているので、仕事中でなければ電話に出る声が尖ったものになる。今は努めて平静を装った――つもりだ。 『大輔、おつかれ。忙しいとこ悪いんだけど、ちょっと頼まれてくんないか?』 井上も仕事モードの雰囲気で、挨拶もそこそこに単刀直入に話し始めた。これは井上が担当する事件に関することだと、大輔もすぐに察した。 「わかりました。……それでなにをすればいいんですか?」 大輔はノートパソコンを少し横にずらし、机の引き出しからメモ用紙とペンを取り出して置いた。 『昨日、O駅の近くの公園で若い男の刺殺体が見つかったんだ。で、今日になって身元が判明して、北荒間の……ストロベリー、バス? てとこの従業員なんだってさ。俺らも後で聞き込み行くけど、先にちょっと調べといてくんないか』 「……ストロベリー・バス?!」 大輔はとっさに斜め向かいの席に座る晃司を見た。晃司も『ストロベリー・バス』の名に反応し、二人が立ち上がったのは同時だった。 大輔は目の前の事務仕事を放り出し、荒間署を飛び出した。晃司と二人、北荒間に向かって――。
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