消えていく運命

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でも煌が離れていくと不安が戻ってくる。 帰り支度をする兄の腕をつかんだ。 帰らないで。 ここにいて。 兄弟だから言わなくても何を考えてるかだいたいわかる。 煌は無言で俺の横に滑り込んできた。 「ワニ皮のケースか…。あの子がんばって在庫探したんだろうな」 「そうなの?」 俺はなんとなく「高いもの」って言っただけで、ケースまでは知識がなかった。 とりあえずこの印鑑を使う度に今の行為を思い出しそうで恥ずかしい。 「はんこ押す時楽しみになったな」 「忘れるもん」 「ホントにぃ?」 煌は前ぶれなく俺の服に手を入れて胸の突起をゆるゆる触ってきた。 「ぁ…‥ん…っ…やだ‥‥もぅ‥…」 「シャチハタも扱ってるなら頼もうかなあ。有加利なんてほんっと変わった名字」 煌の独り言を聞いてるうちに眠くなってきた。 「ゆうかり」なんてコアラが食べる葉っぱみたいで子どもの頃はよくからかわれた。
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