消えていく運命

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勧められるまま高額商品を買いまくる俺にキレた煌は俺の通帳やクレジットカード、固定電話まで取り上げて、最低限の現金だけお小遣いのように渡してくる。 「お前奴らのリストに載ってるぞ。もう誰か来てもドアを開けずに応対しろ」 意味がわからなかったし、どうして煌がそんな裏事情を知っているのかも謎だった。 「何でそんなこと知ってるの?」 うかつにも兄弟なのに俺は煌の裏の顔を何も知らなかった。 「見せてもらったんだ」 「誰に?」 「そいつらに」 「世の中表と裏があるくらいはわかるだろ?」 同じ顔が少しずつ研ぎ澄まされた表情になって、いつもの優しい兄が豹変して俺を迎えに来た死神に見えた。 怯える俺の悲鳴は喉に詰まって声にならない。 長い前髪が片目を隠しても凄みが消えない煌の顔。 恐怖で俺の目は潤んであふれそうになった。
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