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回転
印面を歯ブラシでゆっくりこすって布で拭き取って終わり。
印鑑専用のブラシを買わなくてもこれで充分。
一般的な黒のケースに入れて有加利さんを訪ねた。
これでもう会わずにすむと思うと安堵感に満たされる。
「そろそろこの商売やめてたくさん儲けたいなあ」
強面の自称社長がテーブルに両足をのせてソファで呟いた。
「颯真チャン何か思いつかないー?」
元々チンピラの社長は悪知恵は働くが楽して儲けることしか考えていない。
見た目はガラの悪い強面だが、中身は小心者で自分では何もできない。
俺もそうだけど。
「有加利さん家に行ってきます」
詐欺師は見た目が大事、スーツを着ているだけで信用される。
サラリーマン風を装って俺は立ち上がった。
「そいつ何でも買う『良客』だろ。今回は振り回されたけどみんな目を付けてるからなあ。逃したくないよな」
がはは、と下品な笑い声を発してる社長に見送られて最後の訪問に出かけた。
呼び鈴を鳴らすと案の定煌さんが出てきた。
「何度もごめんね、どうぞ~」
同じ顔でも月と太陽だな、そんな事を思いながら中に入った。
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