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「俺のメンタルでは詐欺はキツイです。ちゃんと就職して普通の仕事がしたいと思ってはいますが…」
俺はなぜか誰にも言ったことのない心の中を吐き出した。
なめらかに動く口を眺めながら煌さんは小さくうなずいて聞いている。
「今の稼業やめても保障がないもんねえ」
「あなたみたいに不労所得がある人がうらやましいです」
自分を否定されたようで今言える最大限の嫌味を放ったが煌さんは平然としている。
「金があったから辞められたんだよ」
にやにやしている煌さんの服の袖を怜さんが引っぱった。
「何の話?」
怜さんは膝を抱えて座っている。
不安そうな怜さんの頭を撫でている時は優しいお兄さんの顔。
こんな弟さんがいたら溺愛するよな。初対面の時はあまりのキツさに面食らったけど。
「悪い子を更生させるボランティア活動してるの」
思いもよらない答えが返ってきた。
「おたくの社長よりはいい仕事してるでしょ?」
「…はあ」
「あれ、心のない返事」
煌さんはがっかりしたような顔をしたがどうせ演技だろう。
「時間あるとき手伝わない?報酬は俺が出すよ」
「考えときます」
やっぱり俺は心のこもってない返事しかできなかった。
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