42人が本棚に入れています
本棚に追加
「だっ……だが、そうでなければ、お前はとっくに死んでたんだぞ!!」
低く冷ややかに落とされた声に、ウェルズは懸命に反駁する。
「そっ、そうだ……お前は確か……内臓密売組織から、身体だけが研究所へ転売されて来たんだ。ノワール経由でな」
『ノワール』というのは、裏社会では有名な、兵器開発・密造組織の名称だ。
「内臓のなくなった身体なんて死体と同じだ。だから、我々の技術でお前を蘇生させてやったんじゃないか!」
「こんなモノ、埋め込んでか」
次の瞬間、少年の華奢な腕に、糸状の青白い燐光がスパークして飛び跳ねた。
「ヒッ……!!」
「確かに感謝してるよ。お前らに報復する力を与えてくれたことにはな」
見た目に似合わぬ威圧感を伴った声音が、低く落ちる。
音叉のような、透明な高音を立てて、少年の掌に青白い光弾が生まれる。美しくも恐ろしいそれは、スパークを纏いながら肥大していく。
「助け……た、助けてくれっ……頼む」
「じゃあ、返せよ。俺の生まれ持った臓器と平凡な人生を今すぐ、この場で!!」
「私はっ……私は、何もしてない! ただ、私は」
ウェルズが、最後まで言うことはできなかった。
憎悪を込めてウェルズを睨み据えた少年は、青白い光弾を携えた手を叩き付けるように鋭く、上から下へ向けて一振りする。
その手から放たれた光弾は稲妻のような速度で疾駆し、ウェルズを捉えて破裂した。
世界が白く塗り潰された錯覚の中で、彼の意識は永久に途絶えた。
最初のコメントを投稿しよう!