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Code.1 Meet with crimson
ズン、と身体の芯に響くような音を立てて、一瞬景色が消し飛んだ錯覚に陥る。
白くなった視界が徐々に晴れていく。先刻まで男がいた地面は抉れ、彼は腕一本を残してこの世から消え失せていた。
それを、底冷えのする青い瞳で無感動に見つめた少年――エマヌエル=アルバは、視線を自身の手に落とす。
(……一瞬で楽にすんじゃなかったかな)
どこか見当外れとも思える感想が、脳裏をよぎった。
直後、ザリッと地面を擦る音が背後から聞こえて、エマヌエルは小さく息を吐く。
「――お前、どこの人間型生体合成兵器だ」
低い声に問い質され、声のほうへ目を向ける。無感動に転じた視線の先には狼が数匹、狭い路地の出入り口を塞ぐようにジリジリと迫っていた。
「答えろ。アンブローズ=ウェルズを処罰するのは我々だったはずだ。何を勝手な真似をしている」
頭上からも詰問が降ってくる。
振り仰げばもう一匹、塀の上へ器用に立っている狼がいた。
「そっちこそ、どこの動物型生体合成兵器だ?」
クスリ、と面白そうに笑って問い返すと、「黙れ! 貴様に質問を許した覚えはない!」とその狼に吼えられる。
「もう一度訊く。お前は誰の許しを得て、勝手に処罰を断行した」
路地のほうの狼が、自身の苛立ちを押さえるように問いを重ねる。だが、エマヌエルはまともに取り合う気はなかった。
「敢えて言うなら、個人的な復讐だよ。別に誰かの許しを得るような筋合いのモンじゃねぇだろ」
肩を竦めて言うが、こちらとまともにやり取りをする気がないのは彼らも同様だったらしい。
「所属と識別ナンバーは」
「そんなモノねぇよ」
「戯言を抜かすな。貴様、今確かにフォトン・シェルを使ったではないか」
「貴様、ヒューマノティックだろう」
塀の上にいた狼が、地面へ降り立ちながら畳み掛ける。
ヒューマノティック――それは、スィンセティックと総称される生体合成兵器の内、人間ベースのそれを指す言葉だ。
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