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彼女がこんな風になってしまったのは、大学で少々タチの悪い友達と付き合うようになってしまってからのことであるらしい。そのタチが悪い、というのは不良だとかヤクザに絡んでいるとかそういう方向ではない。お金持ちであることを見せびらかし、それをステータスのように語りすぎるような友達、である。
その友達いわく。毎日服を変えるのは当たり前、数日で服のローテを組むなんて有り得ない――というところから。同じバッグは、同じ人と会う時は二度と使わない、人に見せて恥ずかしくないバッグなんてブランドもののバッグぐらいしかない、というところまで。セレブ的生活を自慢してきた友達は、SNSでも写真をアップしまくり、大量のフォロワーを獲得し鼻高々であったという。それを見て、恵も“目が覚めて”しまったということらしいのだ。私から言わせれば洗脳されてしまったとしか思えないのだけれども。
彼女はそのご立派な友達の真似をして、ひたすら高い買い物に走るようになった。髪飾り、化粧品、小さなポーチからバッグ、ブラウスにコートにスカートに靴に――ありとあらゆるブランドものを、新作が出るたびに買い漁り、しかも大して使うこともなくしまいこむということを繰り返すようになってしまったのである。
元々は、バイトでこつこつとお金を貯めていた筈だった彼女。将来の結婚資金なの、なんて可愛い夢を語っていた彼女は一体何処に行ってしまったのか。気づけば立派な買い物依存症の出来上がりである。高校生時代から貯めていたお金はすっからかんになり、それでも足りないから知り合いにお金をせびって稼ぐようになってしまったというのだからどうしようもない。
そうやって、お金をせびられている一人である私でさえ、総額ウン十万円も彼女に貸してそのまま戻って来ないと渋面を作っているのである。一体彼女は、方々にどれだけの金額の借金を作っているのか見当もつかない。既に闇金からもお金を借りてます、と言われても驚かないぞと思っている私である。あっちこっちでブラックリスト入りも果たしていそうで恐ろしい。
「ちょっと買いたいものが多いってだけじゃん、なんでそんなに怒られないといけないのよ」
そんな私の非難に、彼女は心外とばかりに眼を丸くする。
「お洒落に気を使いたいだけ。ちょっとそのために多めにお金使ってるだけ。バイト代だけじゃ足らないんだもん」
「もん、じゃない。あんた完全に買い物依存症。ちゃんと治療しないと破滅するよ。借金地獄になってからじゃ遅いんだよ?」
「そこまで馬鹿じゃないってば!ねーユカリン、いいでしょ?ちゃんと返すって毎回頼んでるのに」
「口だけじゃない。一回もちゃんと返して貰ったことないのに何偉そうに言ってんの!ダメなもんはダメ!」
「えええ……」
その日。私はどうにか、彼女の“おねだり攻撃”を回避することに成功した。
といっても、恐らく私から借りなくても他の誰かから借りるだけであろうし、今日貸そうが貸すまいが彼女がまたお願いしてくるであろうことは簡単に予想がつくのである。
どうしたものか、と自宅に帰ったあとで私も頭を抱えたのだった。貸したお金を返して欲しいのもあるし、これ以上貸せる余裕などないのも確かだけれど。それ以上に、私は彼女の今後が気がかりでならないのである。
いくら説得したところで、彼女の“金欠”は続くし、浪費癖も直らないのだろう。
どうすればいいのか。これ以上彼女が危ないお金の借り方をする前に、止めてやる方法はないものだろうか。
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