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水曜日。第一週の丁度折り返しの日だ。
登校して早々、オレは美羽ちゃんにコウカという人物について質問した。
「あー、ママのこと?ママに何か用があるの?」
答えはどんぴしゃり。予想通りだった。やはり母親だったか。
友子ちゃんのコウカという子に対する思いが強く、娘でありよく似た美羽ちゃんに接触していた。その思いを受けていた美羽ちゃんも友子ちゃんの姿がよく見えていたということか。これで合点がいく。
「まぁ……オレもってところか。美羽ちゃんが見たおばけが君とママがそっくりだって言っていたんだ」
「へー。似てるかなぁ……?」
大げさに首を九十度に傾げている美羽ちゃん。
オーバーリアクションは子供の特権だな。
「それでさ、美羽ちゃんのママとお話したいんだけど……明日会わせてもらえないかな?」
「うん!いいよ!おうちに帰ったらママに聞いてみるね!」
「じゃあ、OKなら明日教えてね」
とんとん拍子に話が進んだ。
美羽ちゃんの母親がオレと会うことに承諾してくれればいいのだが――心配なのは美羽ちゃんの母親がどんな人物かということだ。こんな凶暴な女の子を育てているから元ヤンキーとかだったらどうしよう。
不良は嫌だな。気が重い。
三日目になると学習サポーター役にも慣れてきて、少し余裕を持つことが出来るようになってきた。体育でボロボロになることもなく、自由過ぎる子供達に振り回されることも……少しは減った、と思う。でも音楽の歌を教えるのだけは無理だな、オレのは騒音被害で訴えられる。
目まぐるしい授業が終わり、子供達も下校し終えた放課後。
夕日が窓から差し込んできた頃合いを見計らったかのように、三つ編みの女の子――土倉友子の霊が陽炎の如く揺らめいて出現した。
「おーい、友子ちゃーん」
「あ!なな姉さん!」
ななと友子ちゃんはきゃっきゃとはしゃぎ回っている、オレをそっちのけで。怖がっていたくせに全然気にしてないじゃないか、とツッコミを入れたくなる。
「あー……楽しんでいるところ悪いんだが――」
「ひぃっ!怖いお兄さんだ!」
やっぱり駄目でした。
友子ちゃん、凄く警戒してる。
「大丈夫だよ。ちびっ子が大好きだけど悪い人じゃないから」
「それフォローしてるつもりか?あと誤解だから」
絶対わざとやっているな、こいつ。母さんの悪いところをガッツリ吸収している。
「えっ…と、その、駆郎さん……でしたっけ?」
「そうだよ。ななからは詳しく聞いてる?」
「……はい。カッコイイロリコンさん…?とか何とかって……」
「断じて違うから、ロリコンじゃないから」
余計なことがガールズ霊トークに入っていたようだな、思った以上に。
ギロリ、とななを睨み付けるが、鳴らない口笛を吹いて誤魔化している。古典的な上に叱られるのに慣れてきているのが腹立たしいな。
「オレのことはどうでもいいとして、ちょっと友子ちゃんに聞きたいことがあるんだ」
「私に……ですか?」
「分かる範囲でいいから、君がおばけになった時――つまり事故にあった日と、その年について知りたい」
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