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俯いたうちの耳に、右京はんのクスクスという優しい笑い声が届いた。
「姫扇、顔を上げてごらん」
え……。
恐る恐る右京はんの方を向きながら顔を上げると、心の底まで浸透してその色に染まってしまうような、笑みがあった。
もう、他の色になんて塗り替えられる事なんて、考えられへんと思てしまうような、極上の笑みが。
右京はんの笑顔が視界に焼き付く。
うちは、うちは、右京はん以外の男はんはきっともう見られへん。
うちの恋はいつも、その人に恋する度に、これが最期や、と思う。
右京はん。うちの恋は、右京はんで最期どっしゃろか。
「姫扇、簪を」
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