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 稲穂と白い鳩の簪。松の内と言われる元旦から十五日までの間に意中の人にその鳩の目を入れて貰うと結ばれる、という言い伝えがある。  男衆(おとこし)さんに着付けてもろて、支度が終わったうちは、鏡の前で簪を挿した。 「姫扇ちゃん、色んな旦那はんから鳩に〝目〟書いたろか、言われてはったやろ。ずっと断らはって。この日を待ってはったんやなぁ」  同じお座敷に上がる為、屋形に迎えに来てくれはった梅扇さんねえさんが楽しそうに言わはった。うちはちょっと恥ずかしゅうなってうつ向いてしもうた。  梅扇さんねえさんは優しく言ってくれはった。
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