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 眼鏡を掛け、スーツ姿に背筋がピンと伸びてはる右京はんの自然な、何気ない、そんな仕草にも心臓は跳ね上がる。気品と粋がこない見事に同居してはる男はん、うちはまだ見たことおへん。  右京はんは芸舞妓の憧れの的。うちの鳩に目書いてもらうなんて。改めて考えてみると、とんでもなく身の程知らずや。  梅扇さんねえさん、駆け引きなんて、うちにはとんでもない事どす。  右京はんにお屠蘇を注ぎながら、色んなこと考えて、一人で恥ずかしゅうなってしもうた。  新年の舞いは〝十二月〟。  うちはこの井上流の舞いが好きや。扇を持ち、地方のおねえさんの囃子に合わせて舞う。
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