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盃を手にしはる右京はんは、上品に微笑みかけてくれはった。
胸が、高鳴る。どないしよう。こないになって。
火照る顔を隠そうと顔を俯けてしまう。うちは右京はんに誉めてもらいとうて一生懸命お稽古しとるん、と心の中で呟きながら。
右京はんは、他の旦那はん達とは違うてあまり言葉や態度で誉めたりはせえへん。でも、自分の舞いが良かった時は、分かる。
極上の、まるで媚薬のような笑顔を見せてくれはるんや。
媚薬。そう、心を捉えて離さない、痺れるような、麻痺してまうような幸せの感覚をくれはる。今夜の右京はんも、そうやったね。
ああ、うちは、上手く舞えたんどすね。
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