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そっと胸の中で噛み締めた。
鳩の目、やっぱりうちは言えへんし、右京はんに言って貰うなんて身の程知らずどす。
ええどす。うちの恋は叶わぬ恋やから。ええんどす。
新春のお座敷は盛り上がり、旦那はん達は楽しんでくれはった。そろそろお開き――という頃だった。ほろ酔い加減の旦那はんが言わはった。
「なんや姫扇。簪の鳩、まだ真っ白やな。誰か意中の旦那でもおるんかいな」
ドキンッとした。思わず右京はんを見てまう――。
「姫扇はまだまだウブやなぁ。分かりやすうて」
明るく笑う旦那はんの元気な声に狼狽えた。
イヤやわ。どないしよう! もう右京はんの顔見られへん!
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