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「姫扇ちゃん、幸せいっぱいどすな」  梅扇さんねえさんの優しい声が、白い吐息と一緒に雪の残る夜の花街に解け込んだ。  しめ縄飾りや門松に飾られた祇園の夜道をゆっくり歩き、梅扇さんねえさんと一緒に屋形へ帰っていた。  梅扇さんねえさんは、自前の芸妓さんやから屋形に戻らはる必要はないんやけど、うちをいつもこうして送ってくれはる。 「松の内のうちに意中の旦那はんに簪の鳩に目を書いて貰えたら結ばれる。素敵な言い伝えどすなぁ」  梅扇さんねえさんが、しみじみと言わはった。 「へぇ……」  そうどすね。 「姫扇ちゃんの想いが叶うとええどすな」
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