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「この簪で御贔屓の旦那はんか、意中の旦那はんと〝恋の駆け引き〟をするんえ」  あの時のねえさんの艶っぽい微笑に、同じ女やのにドキンとしたのを、今でも覚えとる。  花街には、長い歴史と共に受け継がれ守られてきた伝統と仕来り、言い伝え、というものが様々ある。そのうちの一つに、松の内と呼ばれるお年始、京に限らず花街の芸妓達が髪に挿す稲穂に白い鳩の簪にまつわるお話があった。  稲穂と白い鳩には様々な願い、祈りが込められている。稲穂は五穀豊穣。鳩は幸福の象徴。芸舞妓達は松の内の簪で、今年一年の花街繁栄を祈願する。
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