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ただ、この簪の鳩にはもう一つ別の言い伝えがあることを、うちは仕込みさんときに梅扇さんねえさんから教えてもろた。
白い鳩には、目が入っていない。その目を意中の人に書き入れて貰うと想いが添い遂げられるとか。
だから、花街版バレンタインなんやね。
松の内、お目当ての旦那はんのお座敷を、芸舞妓達は浮き浮きしながら待っている。
うちは昨年、梅扇さんねえさんの名前から一字頂いて〝姫扇〟という名前になった。
晴れて舞妓として店出し(デビュー)した初めてのお正月。鳩の目は、御贔屓さんである呉服屋の御主人が書いてくれはった。
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