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「姫扇ちゃん、待ちに待った御幸の若旦那はんから今年最初のお座敷入ったえ」  年が明けて一週間も経っていたある日。屋形で電話を受けていたおかあさんが受話器を置き、メモを取りながらうちに笑い掛けた。  うちの待ち人。  おかあさんの言う、うちが待ちに待っている旦那はん、御幸家の若旦那はんは、東京に住んではるお方やった。だから、松の内は来られへんのや、と諦めかけとった。  けど――、  来てくれはる! しかも、うちに声をかけれくれはった!  それだけで胸はもう、天にも昇るくらいに高鳴り始めていた。
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