鎖より確かに違いを繋ぐものを、俺は知っている。

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鎖より確かに違いを繋ぐものを、俺は知っている。

男の上で腰を振るのは初めてだが、思っていたよりスムーズに動く。自分の気持ちいい場所に太いものが当たるように腰を振ると、卑猥な水音が響く。上下に揺すって、ときどきグリグリと円を描くように腰を動かすと気持ちがいい。 「んっ、んっ」 喘ぎ声が恥ずかしくて、自分の手の甲で口元を隠しながら、自分の中を暴いていく。 こみ上げる熱がどんどんと頭をおかしくしていく。 兄貴は汗ばんだ肌に髪を貼り付けながら、気持ち良さそうに目を伏せている。その精悍な顔を歪めているのは、俺だと思えば悪くない気がする。 「なあ、どんな気分。兄貴?」 わざわざ身体を屈めて、顔を近づけて聞いてやる。 「……今、ここは天国なのか、地獄なのか考えているところだ」 眉を顰め、真面目な顔で言うもんだから、その言い様に吹き出しそうになる。 生き別れた俺の大事な兄貴。俺より出来がよくて、その気になれば何でも出来る。俺よりもずっと早く走れる筈なのに、俺の為に何度も後ろを振り返ってくれる兄弟。兄貴が振り返りながら、俺を見る顔が好きだった。薄墨色の瞳を優しげに細めて微笑む。その顔が……兄貴にとって俺が大事なんだと実感出来たから。 急にじわりと快感が込み上げてくる。 「どっちでも俺と一緒なら、最高だろ」 「それもそうか」 急に下から突き上げらえて、俺は思わず声を漏らしてしまう。 「あっ」 声の甘さに恥ずかしくなって、カッと顔を火照らせる。それに煽られたのか兄貴がぐっと息を詰める声が聞こえ、強く腰を掴まれる。 「くそっ、ダニー。動くぞ!」 兄貴のチンコが俺の中を乱暴に突き上げ始める。 「なっ、なんで。待って」 怪我をしている兄貴を無理させたくないのに。けど、中を突かれるたびに、こみ上げる快感にゾクゾクする。思わず身を捩って逃げようとするが、兄貴に両手を取られ、そのままぐっと身体を引かれる。指先を絡められ、ぎゅっと握られる。指先から兄貴の体温が伝わってきて、じわじわと幸福感が広がっていく。 自由に動けない腕が、兄貴と繋がった手が、俺を興奮させる。 「うっ、んっ、んっ」 互いの指を絡ませたまま、兄貴が激しく俺の中を突きあげる。洞窟の中に二人の体液からなる水音と、荒い息が響く。ずっとこうしていたいのに、どんどん射精感が込み上げてきて、腹筋が震え、兄貴のものを締め付ける。 「ダニーっ」 兄貴が手を離し、俺の腰を掴み、そのまま強く腰を打ち付ける。 「あっ、あっ、あっ」 気持ち良くて頭がおかしくなりそうだ。姿勢を支えきれず、兄貴の胸元に縋り付くような格好になる。ゴリっとチンコの位置がまた変わって、おかしくなりそうだ。激しく中を突かれる。 髪が視界を塞ぎ、兄貴に揺すられる度に色素の薄い髪が揺れる。兄貴の胸の上で跳ねる人形みたいになっているのが恥ずかしいが、気持ち良すぎて動けない。 ただ、思うがまま揺さぶられる。 中で兄貴のチンコがピクピクと跳ねているのがわかり、兄貴も射精が近い事がわかる。 自然と顔が近づき、唇を交わしあう。汗の匂いと、塩気の濃い唾液の味がする。普通なら知ることがない、快感を耐える兄貴の面がよく見える。汗がぼたぼたと俺の身体に垂れてくる。もう濡れているのが、精液なのか汗なのかよく分からない。 「ダニー、ダニー。俺のだ。誰にも渡さない」 そう言い聞かせるように何度も呟き、兄貴が腰を振り続ける。 その執着が何故か心地よくて、俺はぎゅっと力を込めて兄貴のものを締め上げる。すぐに仕返しとばかりに強く奥を突きあげられる。 「あっ、ああ」 パタパタと精液が落ちる音がする。中が震え、兄貴をぎゅーと締め付ける感覚が更に俺をたまらなくする。俺のチンコが勝手に射精しているのが分かる。 脳みそが蕩けそうに気持ちがいい。 「あっ、グロウス。グロウス」 俺は双子の兄の名前を呼びながら、イく。ビクビクと兄貴のものが入った腹が震え、兄貴もそのすぐ後に射精する。腹の中にたっぷり出されたのは、兄貴の精液だ。 精液をなじませるように何度も強く腰を押し付けられる。 ドクドクと最後の一滴まで注がれた腹の中が酷く熱い。 俺は腹を抑えながら、ゆっくりと地面に横たわる。それは兄貴も一緒だ。荒い息を吐き、地面に裸のまま寝転がる。ランプに照らされた味気ない洞窟の壁を見ながら、俺はぼんやりと冷たい地面を堪能する。まだ、腹の奥がじんじんとして熱い。やられ過ぎた所為か、何だかまだ身体が火照ったままだ。 やばい、気持ちいい。 気持ちのこもったセックスが気持ちいいって、こういう事か。まさかの可愛い女の子ではなく、兄貴で体感してしまった。 兄貴の少しカサついた唇が、俺の柔い唇に重ねられる。兄貴が俺の髪を撫で、首筋をそっと指先でなぞる。顔が近づいたと思うと、そのまま噛みつかれる。 「ぐっ」 血が出るくらいの痛みに、声を漏らす。俺は兄貴の髪を引っ張って、その口を剥がそうとする。 「なんで、噛むんだよ。普通、優しくキスをするとこだろ?」 俺はぐったりと力の入らない身体を引きづりながら、恨めしい目で兄貴を見る。まだ快楽が尾を引いていて、じんじんとしている。 「……いつの間にかこんな傷を作ってくるのが悪い。お前は俺のだ」 そう言って、まだ塞がっていない耳たぶの傷を舌で嬲られる。傷跡を舌先がなぞり、じんわりとした痛みが再燃してくる。 兄貴の執着が心地よく感じるのは、きっとそれは兄貴が俺を置いてどこにも行かない証明になるからだ。 兄貴の身体に触れないように気をつけながら、身体を起こし、兄貴の身体の傷にそっと目線を落とす。 「痛いか?」 脇腹に巻かれた白い包帯を見ながら、問いかける。正直、怪我人とするセックスでは無かったと思う。 「お前に刺された傷の方が痛い」 「そりゃ、よかった」 俺は兄貴の傷の具合を確かめるように指先でなぞらせる。腹の傷からダラリと精液を纏わりつかせながら萎えたチンコを避けて、俺が刺した太ももの傷をそっと押す。 「くっ」 兄貴が痛みで顔を顰めるのをみて、俺は口元を緩める。 「アンタも俺のもんだろ」 きっと兄貴を見上げる俺の目も、執着心を滲ませて光っているに違いない。 兄貴はほんの一瞬だけ驚いた顔をした。それから顔を伏せて、口元を手で覆う。顔が見えないが、分かる。アンタ、喜んでいるだろう。 兄貴の顔が近づいてきて、首筋についた歯型をねっとりと舌先でなぞる。 そしてまた噛み付く。自らの印を確かめるように。 「痛えよ、馬鹿」 「俺の方が痛い」 俺たちは見つめ合い、それから互いの精液と汗でぐしゃぐしゃになった毛布の上で、子供の頃のように笑いあった。
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