それぞれの招待

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カイとゲンは同じ高校に通う幼なじみだ。 知的で落ち着いたカイと、体育会系の代表のようなゲン。 正反対の性格であり、時には喧嘩をしながらも、お互いを認め合い庇い合いながら成長していた。 夏休み直前の朝、いつもなら別々の登校が珍しく一緒になった。 「おうっ!カイ!おはよっと!」 「ゲン....珍しく早いな」 「ああ、部室に先輩から借りたDVDを置いてきちまったからよ、センセーに見つかる前に回収すんだよ」 「DVD....容易に想像できるな」 「ほっ?真面目ちゃんなおまえが想像できるとは....」 「いや、誰でも分かるだろ」 「うーん、まあ健全な肉体と精神を持つ年頃だからな....おまえも観る?」 「いらん」 「このムッツリスケベが....」 「誰がムッツリ....」 カイの視線がゲンの向こうに移る。 「危ないっ!」 走り出すカイ。 すぐにゲンも気がつく。 ベビーカーが歩道から車道へとゆっくりだが、動いている。 母親と思われる女性が倒れている。 ベビーカーは車道へ出てしまった。 運悪く路上に一台の車が駐車していたため、その陰に隠れてしまったベビーカーに誰も気づかない。 交通量がそれほど多い時間帯ではない分、行き交う車の速度が上がっているようだ。 スピードを上げて近づく車。 「まずいっ!」 道路の反対側から飛び出すカイと、それを追うゲン。 車道へ出てきたベビーカーに体当たりをするカイ。 そのカイを庇うように後ろから覆い被さるゲン。 急ブレーキと直後に響く鈍い音。
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