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1 転機
一月。新学期も始まり、ようやく落ち着いてきた頃だ。今年からいよいよ受験生。気を引き締めていかなければならなくなる時期だ。
まぁ、そうはいっても、正直なところまだ希望する高校がなく、のらりくらりとしていた。受験生の意識なんて、すぐに持てる訳がないし。
今日は土曜日。蒼介に誘われて、近所にあるショッピングモールのゲームコーナーに遊びに来ていた。
「あっ、ちょっ、ああー!!また負けた…」
「っしゃ!」
蒼介は顔良し、運動神経良し、頭良し…とリア充でいろいろとハイスペック(性格はバカだけど)なのに、ゲームは全くダメダメだ。だから、俺に勝てたことはまだ一度もない。今やっていた格ゲーも、俺の圧勝だった。
「うー、俺センスないのかなー…」
「ないね」
「即答っ!」
蒼介は嘆いたあと、「もう一回だ!」とこちらに人差し指を突き出してきた。ちょ、人を指差すな。
「…いや、もう何回やったと思ってるんだよ。いい加減諦めたら?」
「いーや、今日こそは絶対に一勝する!」
バカに加えて、負けず嫌いなんだよなー。もう諦めてほしい。流石に疲れた。
ちらっとスマホの時計を確認する。そして、ゲームを始めてかれこれ三時間は経過しているに気がついた。喉が乾くわけだ…買いに行くか。
「俺、飲み物買ってくるー」
「あ、俺の分もよろしく!」
なんでお前の分まで……はぁ、まあいいか。
自動販売機はゲームコーナーの外にある。俺は騒がしいゲームコーナーを出ると、自動販売機の前に立ち、適当にコーラを二本買った。
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