プロローグ

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プロローグ

 プロローグの初っ端からこれを言うのは本当に変だと思うけど、俺はクラスメイトに嫌われている。とはいっても、いじめられているわけではない。うちの中学にはいじめをする度胸のあるやつなんていないと思う。まぁ、というより、ただ単に俺に近づきたくないだけなのかもしれないけど。せいぜい無視されるだけだ。……あれ、これもいじめか。  野暮ったい前髪を鼻の下まで伸ばして顔を隠し、いつも下を向いている俺。物心ついたときにはいつのまにかそうなっていた。そんな俺が、クラスで孤立するのは当然だな。  髪の毛は今のところ切る予定はない。もうすぐ高校受験だし、面倒なのもある。だけどなにより、前髪で視界が狭くなるというのは、案外気楽なのだ。目、合わせなくて良いし。  そんな容姿の俺と付き合いたがるやつは、たった一人しかいない。  川野蒼介(カワノ ソウスケ)。それがその一人の変わり者の名前だ。蒼介は、小学生の頃に転校して来た俺に、一人で近づいて来た。そして、既に煙たがられていた俺に無遠慮に話しかけて来た。 「よ!俺、川野蒼介っていうんだ。よろしくな!」  それから、よく話をするようになって、今では親友に昇格している。あいつはかなりのイケメンで女子にモテモテなのに、俺にばっかり構ってくるなんて、本当に変わったやつだ。俺にはもったいないくらいなのに。  ……急に印象を変えるのって、怖いよな。俺も、変わりたいと思ったことはある。思っただけ。視界が狭くて気楽っていうのも、所詮は現実から目を逸らしているだけだ。  そんなマイナス思考抜群な俺、水瀬透羽(ミナセ トワ)に、ある日転機が訪れた。
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