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例え、もう…………
彼女が私を必要としなくても…………
私は、彼女の傍を離れる訳にはいかない。
「ずぅ~っと、ずぅ~っと、いっしょだよ」
姉のまだ幼い………
たどたどしく可愛らしい声―――――。
もしかしたら、本人すらも覚えていないのかもしれないが………
彼女は、本来、とても寂しがり屋なのだ。
私の細い体を抱き締めて、祈るように何度も
繰り返した言葉を思い出す。
ズット…………、イッショ……………。
それは、私にとって甘美な響きの言葉だった。
私をここまで求め…………
必要としてくれた人は他にいなかったから…………。
(……………此処に居る場合じゃない)
姉が、またいつか…………
私を必要とする日は来るだろう…………
きっと。
その時、私は彼女の傍に居なくてはならない。
彼女を寂しがらせないためにも―――――。
それに、このままでいたら翌朝には
ゴミ収集車に放り込まれるに違いない。
或いは、さっきのおばちゃんが誰かに私の事を話し、見せ物にされてしまうかも………。
私は、わずかに空いたゴミ袋の穴から、自分の首を強引に出し………袋を突き破る。
それから、臭いネットを押し上げ、
首を転がしながら人目のつかない場所をと、
さ迷った。
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