親愛なる、姉上様へ………。

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高鳴る気持ちを抑え、そうっと姉の家の扉を 開ける――――――。 (………良かった…………、 まだ、此処に居る――――――) 部屋からは、ほんのりと姉の匂いがした。 まだ、引っ越しはしていないようだ。 見覚えのある玄関………… 見覚えのある廊下を歩いてから、 姉の部屋の前に立つ。 (ふすま)の隙間から中を覗き込んだら、和室に不似合いな、ファンシーな姉の家具が見えて、ほっとした。 (――――――帰って来た) この部屋が…………、 いや、姉の傍が…………… ワタシの居場所――――――――――。 体を揺らしながら、ヘッドフォンで気持ち良く音楽を聴いていた姉が……………、 私の視線に気付き、凍りつく。 「…………何で……………? 何で、アンタがここに……………? …………棄てたのに…………… 今度はバラバラにして棄てたのに――!!」 ただいま、姉さん――――― (………ズット………イッショダヨ………) (おび)えた姉の瞳には………… 幼い頃、妹のように可愛がっていた………… 薄汚れたビスクドールの微笑みが映っていた――――――――
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