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入学式前
「ふわぁ」
大きくあくびをして起き上がると、カーテンから光が差し込んでいた。
時計を見ると、朝の7時前を指していた。こんなに早く起きたのは、中等部の卒業式の日以来である。
集合は9時過ぎだが、あとで慌てるのも嫌なため着替えておこう、と思いクローゼットの扉を開けて、真新しい高等部の制服を取り出す。
ファッションにさほど興味のない俺には普通のブレザーのようにしか見えないが、おそらく至る所に金がかかっているのであろうその制服をベッドに置き、眺める。
うん。やっぱ普通のブレザーだ。改めて見ても、違いが分からん。
着方がわからない、なんてこともないため普通に着替えるだけなのだが、この間に俺と、周りの環境について説明しておこうと思う。
だって、俺の着替えにキョーミがあるやつなんていないだろ?これぞ時間の有効活用。
とまぁ紹介が遅れたが、俺は鮎川紘。ひらがなだとあゆかわひろ。
私立美位江流学園(びいえる学園)に通ってる新高校1年生である。正直言って、センスを疑うような名前をしているが、通っている以上文句は言えない。
なぜ俺が、この学園に入っているのかというと、家族よる影響が大きい。俺が腐男子になった所縁とも関わりがあるため、そちらと合わせて説明しようと思う。
父母と姉そして俺の4人で構成されている家族だが、その実態は腐率100%の腐男子&腐女子家族である。
元々は至って普通に育っていた姉と俺なのだが、本が読めるくらいの歳になると、両親によるblの英才教育が行われた。
そのかいあり、今では立派な腐男子な俺だが小さい頃、つまりまだ英才教育がなされていなかった小学校入学時には両親共々ひどく悩んだらしい。
なんでもどこの男子校がいいか毎日論争していたようだ。少しは俺のことも考えてほしい。
そんなくだらない論争の末に決まったのが、私立美位江流学園の初等部だった、という経緯である。
改めて考えると本当にくだらない。
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