私に天は二物を与えた

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 小6のときに書いた「将来の夢」の紙は、自分の机の近くの壁にお母さんが貼った。  机の近くにあっても、基本、見ていない。存在なんてどうでもいい。  だって、本当はこんなものになりたくないから。  何を書いたかすら覚えてない。  覚えてないなら、見ればいい?  そんなことをするだけ時間の無駄。  だって、本当になりたいものは覚えてるから。  ……甘い。このチョコレート、すごく甘い。  ベッドに座って、お菓子を食べて、ゲームをする。これが私の至福の時。  お母さんは、私がこうだって知らない。  本当の将来の夢も。何もかも。  私の将来の夢は「王子様のお嫁さん」だ。  それ以外の何者でもない。  私が英語を勉強する理由―学校ならこう答える。将来役に立つから、と。  それもあながち間違いではない。  だって、王子様と話すには英語が必要だろうから。きっと。これも歴とした将来でしょう?  日本には王子様なんていない。  ここは「天皇」の国だから。  確か1回、莉緒に「皇帝じゃだめなの?」と訊かれたことがある。  答えは、だめ。  王子様は王子様なんだ。  王子様には、富も権力もある。  なにより、イケメン!  どの話に出てくる王子様もイケメンだもん。  王子様はイケメンだって、相場が決まってる!  私が特に好きなのは、シンデレラの王子様!  あの、ガラスの靴を持って追いかけてきてくれるシーン。  素敵だわぁ。  色々あるけど、やっぱりシンデレラかな!  「いばら姫」も好きだけど。  王子様のキスで目覚めるとか、運命って感じだもん!  でも、こんなこと現実では起こらないよね。  現実で1番、起こる可能性のあるものってどれだろう。  ……微妙だなあ。  とりあえず!私は、いつか王子様のお嫁さんになるんだから!
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