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トントン。
「祐ちゃん、ご飯出来たよ」
菜瑠穂さんは、大体、私に声をかけてくれる。菜瑠穂さんは基本、この部屋は私しかいないことを分かってくれている。
「今行きます」
まず、自分の部屋に鍵をかける。
ガチャ。
「出てきた、出てきた」
「今日のご飯はなんですか?」
家の裏口で食堂につながる扉に鍵をかけながら訊く。
「フワフワ、ハンバーグよ。デミグラスソースだけど。祐ちゃんは、和風ハンバーグが好きなんだったっけ?」
廊下を歩きながら話す。
「うん、まあ。でも、デミグラスも好きですよ」
「良かった。……北野さんがデミグラスハンバーグ、好きなのよ。どうしても、譲れないらしくてねぇ」
「北野さんらしいですね」
北野さん、適当な割にこだわりが強いからねー。
「あー!北野さんを呼んでくるの忘れてた!ごめんね、祐ちゃん。先に用意してて!」
「分かりました」
菜瑠穂さんがスリッパをパタパタいわせながら戻っていく。
えーっと、お皿お皿。
菜瑠穂さんはキッチンの棚にしまってたよね。
1枚、2枚、3枚、っと。
お箸は、これが菜瑠穂さんの。これが私の。北野さんのはこれ。大家さんはいないから、いらないね。
机の上に置いて、っと。
さあ、ハンバーグをお皿に乗せよう。
どれにしよう。
菜瑠穂さんは作るのが上手いから、大きいハンバーグを1つ。中ぐらいのハンバーグを2つ。小さいハンバーグを3つ作ってくれている。
別に私は食が細い方じゃないし、小さいのじゃなくていい。
中ぐらいにしよう。
フライ返しでお皿の上にハンバーグを乗せる。スプーンでデミグラスソースを垂らす。
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