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しっとりと、生真面目な彼らしい声が、静まり返った教室で響く。
やっぱり、中田の声は綺麗だな。耳に心地いい声。透き通るような声。
さ、移動しよう。
辻と私、橋本、吉田、宮本が、台本を持って真ん中に移動する。
辻と私が向かい合い、辻の後ろに3人が立つ。
「ある国に、シンデレラという美青年がいました。父親を病気でなくし、シンデレラは母親とふたりで暮らしていましたが、母親はシンデレラのことをとても可愛がっており、とてもしあわせな毎日でした。ところが」
「はい、明るくなりました」
先生が言った。
舞台明転ってことだね。
加藤が、教室の外に移動する。
私は辻に向かって頷いた。
「シンデレラ、私は結婚するわ。この方と!」
辻は橋本を指さした。
あんなに嫌がってたくせに、うまいじゃん。
「ねえ、許してくれる?」
おっと、私の番だ。
「もちろんです、お母様!」
「ありがとう、シンデレラ!」
3人がニヤニヤ笑う。
宮本、ぎこちないな。
「新しい父親と、義理の兄2人はとてもいじわるでした。彼たちはシンデレラの美しさをねたんでいたのです」
わ~、しっとりしてる~。
やっぱ、中田の声、好きだわ~。
「ある雨の日」
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