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「莉緒、そんなに難しく考えることないでしょ?どうせ、莉緒、そういうの考えるの苦手でしょ?」
「何よ、祐。私をバカだって言いたいの?」
「べーつにぃ」
勉強が得意じゃないでしょ、って言いたいだけ。
「天は二物を与えず、っていうけどさ、嘘だよね。祐なんか、いくつもらってんの。多すぎ。1個ぐらいくれない?」
「無ー理。ていうか、出来ないでしょ」
「そうだけどさぁ」
久しぶりに莉緒が難しいことを言ったと思ったけど、そんなこと?
もう。
「私はこっちの道、抜けるから」
「ああ、林?どーぞ、どーぞ。天才さんは近道してください。平民は、平民の道を通らせていただきます」
「平民の道って何よ」
「え、何となく作った道だけど…」
あきれた。
「バイバイ」
「バイバーイ」
サラッと手を振って、霊でもいそうなひんやりした林を通り抜ける。
別に怖くない。
霊感が少しだけあるから調子のいい(?)時は霊が視えるけど、いい霊ばかり。
言い伝えによれば、死神をやめた神がここに住み着く霊を怨霊化しないように守っているんだとか。
「おかえり、祐さん」
今日は調子が良いのかな。霊が視える日らしい。
「ただいま、華乃さん」
「今日は視えるのね」
「はい、調子が良いらしくて」
「へええ」
「華乃さん、今日のお着物も綺麗ですね」
「そう?」
華乃さんが体を少し揺らす。
すると、着物に描かれている花が風に揺れた。
「ありがとう。またね」
「はい」
―また、視える日まで。
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