私に天は二物を与えた

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『ごめんね。今日も遅くなるわ。だから、ご飯、食堂で頂いてね』  今日もか。  毎日、帰ってきたらLINEを見るのが習慣になってる。  お母さんが、いつもこの時間までにメッセージを入れてくるから。  まあ、食堂でみんなと、って言ってもご飯を作ってくれる菜瑠穂さんと北野さんしかいないけど。大家さんは、旅に出てるし。  大家さんの実家は金持ちらしい。本当はどうか分からないけど。でも、住人がいなさすぎる、このアパートを管理しているんだから金持ちなのかなー、とは思うけど。  お母さんも優等生ぶってるんだろうな。  最近、帰ってくるのが遅いのは優等生ぶって残業しているかららしい。  お父さんは、11時過ぎに帰ってくる。  お父さんは、平々凡々だし、残業しているわけではないんだけど。  だから、お母さんとも、お父さんともご飯を一緒に食べることは少ない。  まあ、辛い、なんておくびにも出さないけど。  辛い、って言ったら負けだから。  莉緒は私の家族って面倒くさい、って言うけど、そうでもない―こともない。  優等生するのもなかなか、大変。  でも、劣等生にもなりたくない。  だから、抜けられないんだよね。  私の本性を知ってるのは、アパートの人と莉緒だけ。  親は私のことを、本当の優等生だと思ってる。  お母さんのDNAを継いじゃったのに。  アパートの人も私が隠していることを察してくれていて、特に変なことは言わないでくれている。本当、ありがたい。  さ、自分の部屋でお菓子でも食べてゲームしますか!  ガチャ。
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