0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
やらかした!
私は、とんでもない事をやらかした。
「あのさ、これ、どういうこと?」
「え、えっと、ですね……」
私は、正座をしながら肩を竦めていた。
私を怒っている人は、私のアルバイト先の主である。
私がやっているアルバイトは家政婦。私は、主の家でとんでもない事をしてしまったのだ。
とんでもない事とは……。
遡ること、1時間前。
* * *
今日も、お掃除!お掃除!
私は、雑巾や掃除機などの掃除道具を使って、主の部屋を綺麗にしていく。
すると、ふとあるものに目を向けた。
「あれは……掛け軸?」
見たこともない掛け軸が飾られていた。
私は近くで見ようと近づいたその時。
テーブルの脚に自分の足を引っ掛けてしまい、転んでしまった。
だが、転んだだけならまだマシだ。しかし、私は非常に運が悪かった。
手に、バケツを持っていたのだ。しかも、水が入っていた。透明で綺麗な水ならまだ良かった(まあ、良くはないけど)のかもしれないけれど、これまた、運が悪い。
(なんでもかんでも、「運」のせいにはしてはいけないけど)
雑巾を洗ったばかりの汚水が入っていたのだ。
その汚水が、主の掛け軸にかかってしまい、汚れてしまったのだ。
「ど、どうしよ……」
オロオロしていると、ドアがガチャリと開く音が部屋に響いた。
主は、リビングに入ると、掛け軸と床と私を順番に見ると、見たことがない不敵な笑みを浮かべていた。
(あー、やべぇ。殺される)
* * *
ということが起こったのだ。
主は、普段、怒るような人ではない。普段は、スーツがとてもよく似合っていて、眼鏡をかけていて、真面目そうだが(多分、真面目)眼鏡を外すと、とてもイケメン。
(少女漫画でよくあることが現実にあったのだ)
だが、私はこんな温厚な人を怒らせてしまったのだ。
「どういうことかな?」
「あー、えっとですね……。見たこともない掛け軸を見ようと思って近づきましたら……」
「……」
「テーブルの脚に私の足を引っ掛けてしまって、それで、手に持っていたバケツの中の水を、かけてしまいました」
「ほんと、君は……」
「申し訳ございませんでした!」
「はあ。君はほんと、危なっかしいね」
「……ありがとう、ございます」
「褒めてないよ?」
「すみませんでした!弁償しますから!」
「……君が弁償?」
主は鼻で嗤った。私はショックを受けていた。まさか、主が鼻で嗤うなんて!と。
「そうだな……これ、300万円するんだよね」
「へ?」
私は素っ頓狂な声をあげた。
(さ、さん、300万!?)
「もちろん、弁償してくれるんだよね?」
主は、不敵な笑みで私を見つめて、圧をかけてきた。
私は、涙目で窓を開け、ベランダに出ると叫んだ。
「おーかーねーが、なぁぁぁぁいぃぃぃぃ!」
最初のコメントを投稿しよう!