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扉を開けた、その先の景色ーーー
そこは、広々とした空間とは正反対に、仕事場であろうデスクは数個しか無く、ロッカーやソファ、資料を置いておく棚など、必要最低限のものしか置いてなかった。
そして、その声の主は……窓の近くに立っており、そこで煙草を吹かしながら待っていた。
この男が……おそらく、椎名 祐希その人だろう。
「やぁ、初めまして。ごめんねわざわざここまでご足労をかけて。」
「………いや、お構いなく。」
予想してたより威圧的なもの……という事はなく、少し面を食らってしまった。
「喉乾いてないか?と言っても、お茶かコーヒーしかないけど……」
「……あぁ…いや大丈夫っすよそんな」
少し反応が遅れたが、輝は返事を返していく。
「いやいや、折角来てもらったんだ。おもてなしくらいさせてくれ。」
「……じゃあ俺お茶で大丈夫っすよ。コーヒー飲めねえし、やっくんは?」
「………コーヒーで。」
「OK。それじゃそこのソファにでも適当にかけといてくれ。」
戸惑いつつも言われた通りソファに2人とも腰掛ける。
椎名と思われる人物は、手に持っていたタバコを懐から出した携帯灰皿で処理し、お茶やコーヒーの準備を始めていく。
「普段こういうのを買って出てくれる人がいるんだが、今は休んでいてね。少し遅めになっちゃうのは許してほしい。」
そんなことを言いながら、棚から容器を出していく。
「……思ってたより不穏な感じではなさそうだな。予想してたよりはなんだか……」
耶俥は椎名には聞こえない程度の小声で輝と話していく。
「……いや、やっくん。あの人の事、もっとちゃんと見といたほうがいいぜ………。」
「あ?」
意外な回答が出る。こういう時『あぁ、いざとなれば俺のライダーパンチで瞬殺よぉ』とか言いそうな気がしたが。
ふと、輝の表情を見る。
その顔は、少しだけ汗が滲み、目を鋭くさせ、椎名の事を一瞬でも目を離してたまるか、という強い表情をしていた。
その表情に、耶俥は少し驚きを見せる。
「ーーー多分あの人、俺ら2人がかりで攻めても完封される。」
息を飲みながら、輝はそう耶俥に伝えた。
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