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「ちょっと待てよ……確かにそっちも気になるし言いてえ事も分かるよ。
でもよ、んな神出鬼没で出くわすか分からん奴ら相手してる暇あんなら、組織の連中かその息がかかってる連中とっ捕まえて吐かせる方が、この世界の現状を解決出来るのに最速の方法なんじゃねえのかよ?」
輝は椎名に詰め寄っていった。
確かに、今この世界はジュエルを使った事件が増え続けている。
彼ら、リベル率いる自警団が対処するのにも範囲と限界がある。
「俺達よりも圧倒的に人数が多いんだ。あんたが突っ込んで大勢で取り囲めば雑魚でも何人かはとっ捕まえられんだろ?」
「………言い分は分かる。でも、これは俺個人で動いてるのと違って、『上』からの通達も含まれている。動かない訳にはいかないんだよ。
悲しいかな……君達の思うより、上手いこと動いてくれないんだよ。警察って組織は。」
思うところがあるのか、そんな表情をとり椎名は煙草に火をつける。
ふぅっと、2人にかからないように窓の外から煙を出す。
「俺達の仕事は、基本的には『何かが起こった後』に動き始める。君達の場合はそれより数歩程先に辿り着けるかもしれないけど、厳密に言えばほぼ一緒のはずだ。」
「…………。」
否定は出来ない。
現にほとんど、火の元が焚き始めた所に辿り着くといった例えだ。
「要は『分かりやすい事例』でも起きない限り本腰を入れて動き出す、という事にはならない。
本質的には、手遅れなんだよ。いつも俺達の仕事は。悔しいけどね。」
再び煙草の味を噛み締め、煙を出す。
「だから今の上の優先事項は、現に一般のプレイヤーから被害届も出ている強奪の件。即ち怪盗の捕獲にご執心というわけさ。
ま、彼らを捕まえれば組織とやらの情報も出てきて一石二鳥とか考えてるんだろう。」
厳密にはその一般プレイヤーというのはベルトを使って騒ぎを起こす連中を示していると思うが……中にはきっと、関係のない本当の一般人からの報告も来ていたりするのかもしれない。
どちらにしろ、こう言った事情を知らない連中からすれば、どちらも同じものに纏められてしまう。
「………現に、俺達に寄越してきたこの女の件については見向きもしてねえわけか。」
「ーーー知らない連中からすれば『そんな可笑しな事に構ってる時間なんかない』って思ってるだろうね。」
耶俥に対するアンサーは、とても残酷なものであった。
「クソ野郎共が、ぶん殴りに行ってやろうかその連中をよ。」
「公務執行妨害どころの話じゃなくなるよ。抑えて。」
あんまりな対応に、輝は怒りを露わにする。
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