君のないしょ

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  ただのいち会社員、平々凡々な見た目の僕が彼女と結婚できたのは、奇跡オブ奇跡。涙ぐましい努力があってのこと。それ以上に妻が美しく広い心の持ち主であったことが大きいだろう。今考えても感動と歓喜の涙が出る。  ただ、そんな妻に僕は一つの秘密がある。  いや、言いすぎだ。これは120%、僕に原因がある。はっきりものを述べるができず、優柔不断。その上、好きな人の前で格好つけたがり、ついつい見栄を張る己の弱さ。小さなことじゃないか。それを妻のせいにするなど、恥を知れ。あぁ、それでも歯の奥に詰まる魚の骨のように、僕の心に突っかかってくる。  僕は根っからのごはん派だ。  だから何?と思うなよ。たかが米、されど米。食べなければ、僕の体に流れる日本人の血がぐつぐつと沸き立ち、体中からくまなく稲エネルギーを探す。そして、見つからなければ、ヴァンパイアのように飢餓状態に陥るのだ。
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