君のないしょ

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 「あなた!思い出したわ!」  妻は輝いた瞳で僕を見上げた。ん?トコトコ走ってどうしたんだ?妻は台所をガサゴソすると、なにやら炊飯器のような機械を机に置いた。そうだな、今から炊いておかないと。  「ゴパン頂いたの!」    神様の思し召し。夫婦の危機回避。あら?旦那様、嬉しすぎて震えている。ありがとう、結婚祝いにゴパンをくださった旦那様の下請けの下請けの下請けの会社の方!旦那様の好みを熟知していらっしゃるのね。  「いや、ダメだ!」  旦那様の厳しい声が刺さりました。瞬時に私は自らの行動を後悔しました。そうですよね。根っからのパン好きならば、ゴパンなんて米だがパンだが分からない半端者。形のわからないキメラのような邪道。私は踏み込んではいけない聖域に入ったんだ。旦那様、無知故の愚行をお許しください。    
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