君のないしょ

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 「やっぱりパンが良いのね…」  いかーん!妻が泣いている。清らかな心の若妻の涙。朝露のように美しい。ってうっとりしている場合じゃない。僕は妻を抱きしめた。何か言わなくては。こんな時に、言葉がスラスラ出てくるスタイリッシュなモテ男だったら。  「違うんだ…」  違う。もっと妻の心に寄り添えて、撫でるような言葉が良い。なんだって人と人との言葉は良い意味でも悪い意味でも大きな力を持ってしまうんだ。  旦那様、困っている。形の良い太い眉毛を歪めて、私の為に心を締めつけているのね。こんなできない妻でごめんなさい。嫌だわ、もうこんな時間。お忙しい旦那様は明日も早い。こんな私のわがままでつなぎとめてはいけないわ。  「もう…明日はふりかけゴハンにしましょう…」  私はハッと口を塞いだ。疲れと本心から言葉が漏れちゃった。旦那様も驚いてるじゃない。ふりかけゴハンなんて庶民の食べ物知らないに違いない。
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