テスト後の話

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 夜は静かに訪れて、人々の眠気を誘うような月明かりが降り注ぐ。 日中は騒がしかった校内も、今は防犯としての頼りない薄ら明かりに照らされるだけ。 人の気があるのは唯一、くたびれた双眸を隠しもしない教師達のいる場所。 1学期の終わりに訪れる、期末試験の終着点。 「問題はなさそうですね。」 「何度も確認しましたからね。」 「…では、張り出しに行きましょうか。」 クルクルと丸めた長すぎる用紙を肩に掛けて一人の教師は不敵に笑う。 頭を抱えたもう1人の教師を横目で見ながら。 この学園において、忖度というのは確かに存在はするもので その象徴とも言えるのが「特進科Sクラス」なのだがそれは学園生活をちょっと豊かに暮らせるようにする為であり そこに成績の良し悪しはほぼ関係しないのである。 全ては家柄。 ただ相応しくあろうと、その結果成績が付随した場合が多かっただけの話。 かつて、順位は下から数えた方が早い者もいたというSクラス。 つまり、そこに忖度は存在しないということ。 教師が教師である為にどんな結果であろうと、公平に採点し、順位に示さなければならない。 例え、学園が騒がしくなるとわかっていても。 「「どうか、荒れませんように。」」 叶うはずもないのに、教師達はそう願っていただろう。
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