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しかし、甘くて楽しい新婚生活の一方で、実は真友子には現実の悩みもある。
子供と仕事。
このバランスを、どう取っていくのか、なかなか答えが見つからない。
仕事面では、新たなプロジェクトが始まるのは二月からの予定。
だが、予定通りの案件を担当するならば、半年ほど自分がチームを引っ張り、残りをサブチーフの須崎にバトンタッチしても大丈夫だと思われる。
だが最大の悩みの種は、出産後に、どのような形で仕事に復帰するかだ。
もちろん出産は真友子の仕事でも、子育ては夫婦の仕事。
当然、真友子が一人で悩んでいても仕方がない。
だが真友子は、どうにも大祐に切り出すきっかけを掴み切れない。
その理由は、結婚式での大祐の言葉。
もし子宝に恵まれた時は、僕が子育てをします!
大祐という人は、ドジを曝け出してしまうほど裏表のない真っ直ぐな男だ。
だからあの言葉も、その場の空気や一時の感情から飛び出したものではないと思う。
しかし、産休が明ければ子育ては彼に任せるというのも、いささか現実的で ないだろう。
だからといって、今の仕事で子育てとの両立は、これもまた現実的とは 言えそうにない。
一度、きちんと話し合わないとかなぁ。
それとも、やっぱり異動願い出そうかなぁ。
そうは思うが、あっさり今までのキャリアを捨てる踏ん切りは
簡単につきそうにない。
そして、我知らず溜息が零れる真友子の思考は、この日も答えの見えない 迷い道の中を彷徨うしかなかった。
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