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「違うよ。赤ちゃんが生まれたら、いずれは離乳食になるし、 保育園に入れば、お弁当だって要るんでしょ?」 えっ……。 食事をする真友子の手が、思わず止まった。 そして、確認するように向かいの大祐に尋ねる。 「赤ちゃんって、私たちの赤ちゃんってこと?」 もちろん。 大祐は、きっぱりと頷いた。 「言ったでしょ、子育ては僕がするって。それに、まぁゆ言ってたじゃん。 次のプロジェクトは、半分までいけば、後は部下の人に任せられそうって」 「えぇ? でも……」 唐突だったことと、結婚以来ずっと自分が胸の中に抱えてきた悩みを 見透かされていたようで、言葉が繋がらない。 しかし大祐は、当たり前の事のように話を進めた。 「だったら、産休取れる絶好のチャンスでしょ?  僕は、主夫になるつもりはないけど、出世が望めるほどの能力がないのも 分かってる。 だからその分、結婚式で言った通り、子育ては僕が中心にやるからさ」 そして、既に子供が生まれたら育休を取りたいと、上司に相談もしていると いう。 「ちょっと、大ちゃん。 まだ出来てもいない赤ちゃんの話を、会社でしてるの?」 「生まれてから、慌ててアレコレしようとして、ドジ踏んじゃったら ヤバいじゃん。 それに赤ちゃんは、すぐにだって出来るかもしれないでしょ。 僕、がんばるし」 えっ……。 ちょっと色んな意味で、再び真友子は言葉を呑む。 だがそんな彼女に、大祐は少し不服そうな面持ちになった。 「もしかして、まぁゆは、赤ちゃん欲しくない?」
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