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はこぶ、はこぶ。
『勝俣謙吾様
おめでとうございます!貴方はゲームの参加者に選ばれました!
成功すれば、賞金百万円が貴方のものに!』
なんともまあ、胡散臭い迷惑メールもあったものである。賞金が当たりました!ではなく“ゲームの参加者に選ばれました!”というのがやや斬新と言えなくもなかったが。
――つか、これ個人情報バレてね?迷惑メールなのに、名前書いてあるし。集合場所の公園、めっちゃ近くだし。
自宅ベッドでごろごろしながらそのメールを見ていた俺は、そうつぶやいて携帯を充電器に乗せた。
迷惑メールというものは、大抵が適当に組み合わせたアドレスに対しランダムに送っているだけのものである。つまり、そのアドレスに該当するユーザーがいるかどうかもわからないし、当然該当ユーザーがいてもそれがどんな個人であるかなど全くわからない。例えばrakurakhonn@●●ne.jpなんでアドレスがヒットした場合。●●●●様、という個人名宛ではなく、rakurakhonn@●●ne.jp様、というアドレスを名前として扱って送信してくるというわけなのだ。迷惑メールであるかどうかは、ここでわりと簡単に見分けることができるのである。
だからこそ、個人名がついていた場合は――きちんとした企業であるか、個人情報が流出したかどうかのどちらかになるわけなのだ。俺がやや背中に冷たいものを感じた理由がそこである。このメールには、はっきりと俺の本名が書かれていて、しかも極めて現住所に近い場所を集合場所として定めてあった。しかも、ご丁寧に俺のバイトが休みの日に、である。
うっかり何処かに自分で登録していたのを忘れたのか。あるいは怪しい企業に個人情報が流出したのか。これは確かめた方がいいのではないだろうか、と俺は考えた。どっちみち、この集合日には何の予定も組まれていないのである。行って、危ない企業っぽかったらその場で帰ってくればいいだけのことだ。
――まあ、ヤーさんとかじゃなければ、なんとかなるだろ。ケンカの腕には自信あるし。
警察に、連絡しようだなんてことは考えもしなかった。
理由は単純明快。不良アガリで現フリーターの俺は、現在家賃も危ないほどお金に困っていたのである。
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